以前勤めていた会社では肉を扱っていたので、オーストラリアの牧場見学に行かされ
ました。
可愛い黒々とした瞳の牛達が広い牧場でのんびりと草を食べており、のどかな気分だ
なぁと思っていました。
私は嫌だったのですが、工場の中も見学しろと言われ、白い服に着替えて入りまし
た。
そこでは大きな牛の頭がベルトコンベアーで次々と送られてきており、働いている人
達が牛の舌を切り取っていました。
淡々と無表情で牛の舌を切り取っている人たちの心の中はどんなに辛いか、どんなに
嫌だと思いながら生活の為に仕事をしているか、それを考えるとその人たちの顔は見
られませんでした。
床は血の海でしたので、長靴を履かされていましたが、歩くたびにピチャピチャと音
がしていました。
物凄い血の匂いと重い空気と湿気で頭が締め付けられるような気になりました。
首を取った後に逆さまに吊り下げられた牛の体に男性が大きな刃物を突き刺して、真
下に切りさくと、物凄い量の内臓が流れ出ていました。
私は現実なのか、夢の中なのかも感じない気持ちでボーっと見ながら歩いていまし
た。
男性の社員はみな牛を殺す場所にも行かされたようですが、私にはもうそれだけで充
分でした。
その夜の食事は牧場でテントを張ってのステーキ料理でした。
あの牛達がこのステーキになっているという事がなかなか頭の中で一致しませんでし
た。
「あれだけの多くの牛を毎日殺すより、なんとか最小限必要な分だけにするとか方法
はないものでしょうか?」
と上司に言いましたら
「あんたも今まで肉を食べていたでしょう?それならそんなことを言う資格はない
よ。そんなことを言うなら明日は屠殺場の見学をさせようか」
と言われてしまいました。
私はそれからも何年かその会社に勤め、あんな場面を見ていながらも思い出さないよ
うに、忘れるようにして、お肉も少しは食べていました。
この間こちらのサイトを見つけ、読んでいくうちに自分は何を見てきたのかはっきり
と思い知らされ、肉を食べたいという気持ちが全然なくなりました。スーパーの精肉
売り場では、あの時のにおいが思い出されて慌てて立ち去るようになりました。
あの工場見学で見たことはやはり現実の事だと今ようやく確信できた気がします。有
難うございました。
2)その後の苦労話
外食する時はメニュー選びに苦労します。
友達にも気を遣わせてしまうし、申し訳なく思う時もあります。
3)菜食をつづけて良かった点、体調の変化など
肌の感じが昔より良くなったような気がします。